野音に響いた声を胸に
- 堤 若菜

- 2025年11月20日
- 読了時間: 3分
更新日:2月21日
これからも声を上げ続ける

2025 年 10 月より,日比谷野外音楽堂(以下,野音)が建て替えのため使用休止となりました.
この場所は音楽や芸術の舞台であると同時に,人権を守る社会運動の場としても重要な役割を果たしてきました.
2006 年には障害者自立支援法(現障害者総合支援法)の見直しを求める「出直してよ!10.31 大フォーラム」が開催され,全国から約 15,000 人が集まりました.
2022 年には「優生保護法問題の全面解決をめざす 10.25 全国集会」が開かれ原告や支援者が声を上げました.
生活保護基準引き下げ違憲訴訟に関連する集会も複数回にわたり開かれ,憲法 25条の生存権を守る訴えが響き渡りました.
忘れてはならないのが,2014 年に開催された「生活するのは普通の場所がいい STOP 精神科病棟転換型居住系施設‼ 6.26 緊急集会」です.
精神障害領域での野音集会としては初めての開催でした.
病院敷地内に居住施設を設けることは地域移行とは言えず,障害者権利条約の理念「地域での自立した生活」に反しており,人権意識が欠如していること,病床削減のための便宜的手段に過ぎないことが指摘されました.
リレートークに登壇した今は亡き加藤蔵行さんは,生きる屍だと思わされた
38 年間に渡る入院生活を語り,自由に地域で暮らすことの意味を伝えてくれました.
精神障害者の地域生活の権利を守るための,歴史に残る集会でした.
やどかりの里は,これらの集会に幾度となくバスをチャーターして参加してきました.
そのたびに,権利を守るために声をあげる仲間が全国にいることを実感し,深く勇気づけられてきました.
会場の熱気と対照的に,野音から見上げる厚生労働省の建物がひどく冷たく感じられ,私たちの声が本当に届いているのかという思いが胸をよぎったことも忘れられません.
こうした運動の積み重ねは,確かな成果を生み出してきました.
精神科病棟転換型居住系施設は制度は成立したものの,実際には施設は作られず,運動が制度の実施を阻止する大きな力となりました.
障害者総合支援法では違憲訴訟が提起され,2010 年に国との間で基本合意文書が交わされましたが,財政削減を背景に,約束が後退している現状があります.
生活保護基準引き下げ違憲訴訟では,2025 年6 月に最高裁が原告勝訴の判決を言い渡しましたが,厚生労働省は謝罪の姿勢を見せず,専門委員会を一方的に設置し,今後の対応を有識者に委ねる方針を打ち出しています.
優生保護法裁判では違憲判決と補償法の成立がありましたが,補償は一部にとどまっています.
不合理な法律や制度の変革を求め,その実現を国が責任をもって進めるためには国の動きを注視し続けることが重要です.
立ち止まらず,全国の仲間たちと声を上げ続けることで,私たちの変化を生み出す力となります.
野音の休止の報に触れながら,あらためてその思いを胸に深く刻んでいます.

(堤 若菜)



