生活保護引下げ違憲訴訟 最高裁原告勝訴
- 永瀬恵美子

- 2025年8月5日
- 読了時間: 3分
更新日:2月21日
本格的な「生活保障」を求めて

「司法は生きていた」
6月27日,最高裁判所は,2013年から3回に渡って行なわれた生活保護基準の引下げは違法との判断を下した.
全国29地裁,1,000人を超す原告が訴えた「いのちのとりで裁判」は,歴史的な判決を得た.
この日は,大阪,愛知高裁の判決だったが,各地の訴訟も同様の結果が見込まれる.
やどかりの里からも20人近くが現地に赴き,固唾を飲んで判決を待った.
裁判所前で,「勝訴」,「司法は生きていた」と旗が掲げられると,歓声と拍手が沸き起こった.
やどかりの里の人たちも,原告のメンバーを囲み,喜びを分かち合った.
厚生労働大臣の裁量の逸脱を断じる最高裁は,生活保護基準を定めるにあたり,
厚労省が,従来の消費水準ではなく物価下落に着目し,専門部会等で十分な議論や合理的根拠もなく生活保護基準を決めたことについて,「判断の過程及び手続きには,過誤,欠落があったものというべきである」と判断.
2013年からの生活保護基準の処分の取り消しを命じた.
原告側は,基準引下げの根拠とした数字のおかしさなども追求していたが,
そもそも「いのちのとりで」である生活保護基準を,正当な手続きも経ずに定めたこと自体を,最高裁は断じたのである.
国家賠償は認められなかったが,宇賀克也裁判長は「反対意見」として「違法に引下げを拡大して,『最低限度の生活の需要を満たす』ことができない状態を9年以上にわたり強いられてきたとすれば,精神的損害は慰謝する必要はないとは言えず」
「損害賠償請求は認容すべき」と判決文に添えた.
早期の救済,全面解決を判決を受け,「いのちのとりで裁判全国アクション」は,同日,厚生労働大臣宛に,被害の回復と再発防止に向け,基本合意と継続協議の場を設置するよう「要請書」を提出.
交渉には,課長級以上の担当者の出席と真摯な回答を求めた.
しかし,交渉に臨席したのは企画官であり,「判決の趣旨,内容を十分精査し適切に対応したい」と繰り返すのみだった.
そして,7月1日,厚労省は,最高裁判決への対応として,事前に原告らに何ら説明もなく,専門家による審議会を設けるとの方針を突如表明した.
最高裁で下された厚労省の違法性を省みるコメントもなく,原告と対等な論議をしようともしないその姿勢は,あまりに司法軽視,当事者軽視ではなかろうか.
厚労大臣宛の「要請書」では,基準引下げによっておよそ200万人にのぼるとされる被害者への回復に向け,真摯な謝罪,差額保護費の遡求支給,そして47にも渡るとされる生活保護基準に関係する諸制度への影響調査とその被害回復を求めている.
さらに将来的には,権利性の明確な「生活保障法」の制定を求めている.
10年に及ぶ闘いと最高裁判決は,「生活保障法」への第一歩となろう.
誰でも,どんな状況になっても安心して暮らせる社会へ,運動は続く.
(永瀬恵美子)

機関紙やどかり 8月号
<目次> 1.生活保護引下げ違憲訴訟 最高裁原告勝訴
本格的な「生活保障」を求めて(永瀬恵美子) 2.いのちのとりで裁判 最高裁判決を受けて 原告に聞く(渡辺仁,松浦翔太)
3.55 周年の節目に取り組む状態調査 1 人 1 人の声を未来につなげる(大澤美紀) 4.障害年金の現状と課題 障害のある人の所得補償保障について考える(鈴木真帆)
5.キラッと光る魅力発信 活動の原点はやどかりの里 児玉照彰さん
6.社会保障のいまを問う みんなの制度をみんなで守るために(椿原亜矢子) 7.やどかりの動き 8.やどかり日誌 ※このページでは,最新号の1面のみを掲載しています. 2ページ以降の記事や連載は,会員の皆さまにお届けしている紙面でご覧いただけます.
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