top of page

手作りの醤油

  • 執筆者の写真: やどかり通信人
    やどかり通信人
  • 4月1日
  • 読了時間: 2分

毎日の食卓にある醤油は,あまりに身近で,ふだんはその向こうにある時間の長さを意識することが少ないかもしれません.けれど醤油は,すぐにできあがるものではなく,麹と塩水を合わせ,ゆっくりと発酵と熟成を重ねながら,少しずつ育っていくものです.


手づくりの醤油には,急がない時間があります.仕込んですぐに完成するのではなく,日々の暮らしのそばに置かれ,季節の移ろいをくぐりながら,静かに変化していきます.その姿は,何かを効率よくつくるというよりも,小さな命のはたらきに耳をすませながら,ともに過ごしていく営みに近いように思います.


発酵は,不思議です.人の手で支えながらも,人の思いどおりにだけ進むわけではありません.暑さや寒さ,空気や時間,そうしたものを受けとめながら,目には見えにくいところで少しずつ育っていきます.だからこそ,手づくりの醤油には,「つくる」という言葉と同じくらい,「育てる」という言葉がよく似合います.



毎日の暮らしのなかで,ときどき様子を見て,変化を感じる.その時間は,食べることを少しだけ近くに引き寄せてくれます.いつも使っている調味料が,ただ買って使うだけのものではなく,長い時間と手間の積み重ねの中で生まれてくることに気づかせてくれます.それは,食卓を見つめ直すことでもあり,暮らしの中に流れている時間を,あらためて感じることでもあるのだと思います.


そして,長い時間をかけて育てたもろみを,最後に自分の手で搾るとき,そこには味だけではないよろこびがあります.うまく言葉にしきれなくても,ここまで育ってきた時間そのものが,ひとつの味わいとして残るのではないでしょうか.手づくりの醤油には,完成した瞬間だけではなく,そこに至るまでの季節や気配までも,いっしょにしみ込んでいるように思います.


便利さや早さが求められることの多い今だからこそ,こうして時間をかけて何かを育てる営みには,別の豊かさがあります.待つこと.変化を楽しむこと.思いどおりにならないものと付き合うこと.手づくりの醤油は,そんなことを,暮らしの中でそっと思い出させてくれる存在なのかもしれません.



ワークショップのご案内

エシカルcafe としょかんのとなりでは,「手前醤油づくりワークショップ」を開催します.麹と塩水で仕込みを行い,約1年かけて育てたあと,来年の搾りワークショップで仕上げます.第1回は2026年5月2日(土)11:00〜12:30です.

お申込み,お問い合わせはこちらから



bottom of page